SDD Strategic Design DepartmentSDD Strategic Design Department

  • ホーム/
  • コラム/
  • サンプリングとは?抽出方法やマーケティングにおける種類を紹介
コラム

2024.05.31

サンプリングとは?抽出方法やマーケティングにおける種類を紹介

ソリューション

サンプリングとは、世間から自社商品やサービスへの認識を確認する際に役立ちます。自社商品を市場に送り出す前に評価を得られるため、企業のマーケティング活動に効果的です。サンプリングから実践を通し、自社のサービスや商品に対して顧客からダイレクトな意見を受け取ると、より良いサービス提供や商品開発に役立つでしょう。

しかし、サンプリングは手法や活用する種類がさまざまなため、どの方法が適切か悩む方もいるでしょう。今回はサンプリングについて、調査の方法や具体的な取り組みの種類を解説します。自社のマーケティング活動の一つとして活用しましょう。

サンプリングとは?

サンプリングは統計調査の用語です。具体的には、調べたい対象の母集団から実際に調査を行うサンプル(標本)の抽出のことを指します。

たとえば、化粧品を使用している人全員に意見を聞きたいと思っても、全体に調査を行うと労力がかかります。とくに、人気のアイテムであればユーザーの数は膨大で、調査の実施は非現実的でしょう。そこで、あらかじめサンプリングをしておけば、母集団を代表する属性や規模に調査を行うことでデータの収集が可能になります。

また、製造工場などの品質調査において、製造した商品のいくつかをピックアップし、品質に問題がないか確認することや、試供品を配ることもサンプリングの一種です。

サンプリングを実施する目的

サンプリングには複数の種類があり、それぞれ目的が異なります。

以下は主なサンプリングの種類と、実施する目的になります。

サンプリングの種類サンプリングの目的
顧客満足度調査回答結果から購入者の顧客満足度などを推定する
視聴率調査母数集団が多いため、一定数のサンプルを調査することで傾向を割り出す
品質検査製造した商品の一部をピックアップして調査し、全体に問題が発生していないことを確認する

サンプリングの種類ごとに目的が異なるため、自社の目的とマッチするサンプリング方法を選ぶことが大切です。

サンプリングが必要とされる背景

サンプリング調査実施の背景には、企業がコストを抑えながら顧客ニーズを把握したいという考えがあります。商品やサービスに対するデータを集めたいと考えても、顧客すべてに調査を行うと膨大なコストと労力がかかります。

しかし、サンプリング調査を実施することで、全数調査よりも効率的にユーザーニーズや傾向を把握することが可能です。また、サンプリングは手法を定めてしまえば頻繁に調査できるため、自社商品やサービスを取り巻く変化が起きた際、すぐに実施・改善につなげられます。

近年、さまざまな業界業種においてユーザーニーズが多様化し、求められるものは常に変化しています。変化が激しいなかでも、効果的なサンプリングや施策を打ち出すことで、常に顧客ニーズを正しく把握し、自社商品やサービスの改善につなげられるでしょう。改善は企業の業績維持や成長につながります。

全数調査との違いとは

サンプリング調査と比較されるものに全数調査があります。全数調査は母体集団全体が調査の対象となるため規模が大きく、かかる労力も比例します。

しかし、サンプリング調査よりも正確な調査が可能です。ユーザー数が少なかったりより緻密なデータを算出したりしたいのであれば全数調査が適しているでしょう。

一方で、サンプリングは母体集団からピックアップし調査を行うため、コストを抑え効率的に実施可能です。ただし、調査結果においては全数調査よりもやや精度が下がるでしょう。ただし、事前にターゲットを的確に選定することで、少ない母集団でもデータの精度を高めることが可能です。

サンプリング調査の方法

ここではサンプリング調査の代表的な方法を2つ紹介します。通常、実施される方法には「無作為抽出法」「優位抽出法」の2種類があります。

無作為抽出法

無作為抽出法は全数に対してくじ引きを行い、必要な数のサンプルを選ぶ方法です。一般的にはエクセルでリストアップした顧客からランダムに選択するため、調査が容易に進められる点がメリットといえます。ユーザーが多い場合に適した方法で、抽出方法によって主に以下5つの方法に分けられます。

・単純無作為抽出法
・系統抽出法
・層別抽出法
・二相抽出法
・クラスター抽出法

ただし、抽出するリスト自体に偏りがある場合、全体の状況を把握するのが難しくなる点がデメリットです。

有意抽出法

有意抽出法は典型的・代表的な調査対象に主観を交えて抽出する方法です。サンプリング対象者は調査を実施する担当者や有識者が揃えた情報をもとに決定します。調査によっては無作為抽出が難しいケースもあるため、その場合に有意抽出法を採用しましょう。

一方で、選ばれたサンプルが「本当に母集団を代表しているのか」「主観が強くなりすぎていないか」との懸念点もあり、統計として評価ができないデメリットも兼ね揃えています。場合によっては精度が下がる可能性もあるでしょう。

マーケティングにおけるサンプリング調査の種類

ここからは、マーケティングにおけるサンプリング調査の具体的な種類を紹介します。サンプリングで調査対象者を決定したら、次は適切な方法で自社商品やサービスとの接点を設けます。自社に適した調査方法を選定する基準としてください。

店頭サンプリング

店頭サンプリングは店頭や店内など、消費者が購入する場において行うサンプリングを指します。調査現場で自社の商品を直接提供できるため、よりダイレクトに反応をうかがえたり訴求できたりするメリットがあります。

店頭サンプリング実施は、無作為に配布するよりもターゲットを絞り込んだうえで取り組むと、より精度の高い結果を得られるでしょう。

街頭サンプリング

街頭サンプリングは、駅や路上で商品やサンプルを配布する方法です。行き交う不特定多数の人に対し、サンプリングを行いたい場合に適した方法といえるでしょう。

街頭サンプリングは往来が多い駅前や商店街などで行うと、効果を発揮しやすい特徴があります。商品の評価を受けるよりも、認知度を高めるという効果が高いでしょう。

オフィスサンプリング

オフィスサンプリングは、特定のオフィスで働く会社員をターゲットにしたサンプリング方法です。主にオフィス内や社員食堂で実施することが多い施策です。街頭サンプリングと異なり、特定の属性に訴求できる点がメリットといえるでしょう。

街頭サンプリングは多くの人に配布できる反面、見知らぬ人に対して「怪しい」と思われサンプルを受け取ってもらえない可能性もあります。しかし、オフィスサンプリングにおいては「会社で受け入れたもの」と認知してもらえるため、ターゲットに安心感を与えて信頼を獲得できる点もメリットです。

同梱同封サンプリング

同梱同封サンプリングは、オンラインショッピングや通販の配送物とあわせて無料の試供品や販促アイテムを同封する手法を指します。サンプルや新商品を確実に対象者に届けられ、かつ既存客に感謝の気持ちを伝えられる点がメリットです。

また、同梱同封サンプルにおいては他の関連商品をクロスセル・アップセルし、追加やリピート購入を促進できるメリットもあります。

ルートサンプリング

ルートサンプリングは施設や店舗、会員など人を限定して行う調査方法です。ルードごとに属性やエリアなどの傾向が定まっているため、ターゲティングを行ってサンプリングしたいときに適した方法といえます。

たとえば、コスメショップで美容品のサンプリングを行うと、美容品やコスメに関心が高い人に向けて調査が行えるでしょう。具体的な商品やサービスへの評価を集めたい場合はターゲットの行動パターンを調査し、ルートサンプリングを実施しましょう。

Webサンプリング

Webサンプリングは街頭や店舗など特定の場所で行うのではなく、Webページにアクセスしたユーザーに対して行う方法です。たとえば、会員登録やSNSのフォローなどでサンプルを提供するものがあげられます。サービスや製品に興味を持った人に対してサンプリングを行えるうえ、反響やアンケートの回収もしやすいというメリットがあります。

また、現地で調査を行うと、紙媒体からPCや専用ツールへデータを移す必要がありますが、Webサンプリングではオンラインのツールで調査を行うので、データを移行する手間が省けます。

SNSサンプリング

SNSサンプリングはアンケートやプレゼント企画において、InstagramやFacebook、X(旧:Twitter)など、SNSでサンプリングの告知をする方法です。Webサンプリングと同様にデータ管理の容易さや、応募プロセスが簡単な点がメリットとなります。

SNSサンプリングはコストを抑えながら拡散の力で口コミ投稿やリツイートを促進し、対象商品の露出度向上が期待できるでしょう。なお、投稿がいわゆる「バズる」と、ターゲットの枠を超えた認知度向上も期待できます。

インフルエンサーサンプリング

インフルエンサーサンプリングは、SNSのインフルエンサーにサンプル品を提供し、使用した感想をPRしてもらう手法です。影響力の高い人物の発信がフォロワーに届き、購買意欲を高められるメリットがあります。

また、インフルエンサーから企業のSNSを拡散してもらうことで、露出度・認知度向上も期待できます。

アフィリエイトサンプリング

アフィリエイトは「成果報酬型広告」のことであり、アフィリエイトサンプリングは商品やサービスを実際に使ってもらい、その対価としてお金や商品を渡すしくみです。

実際に商品を使った投稿を通じて自社の商品やサービスを広めるため、使用者の実体験をもとにリアルな意見を拡散してもらえるでしょう。実体験を添えたPRは、ユーザーにとって有益な情報です。

また、アフィリエイトは手法が多用なため、最初は大手のプラットフォームを利用すると、スムーズに進められるでしょう。

企業のサンプリング事例を紹介

ここからは実際に企業が行ったサンプリング事例を紹介します。サンプリングにより商品の認知度向上や、ブランディングに起用した事例を見て自社の参考にしましょう。

サントリーの事例

サントリー株式会社は「翠ジンソーダ缶」のリニューアルにあたりサンプリングを実施しました。この商品は現行のものよりも、より爽やかなゆずの味わいやすっきりとした飲み心地が特徴的です。

商品リニューアルにおいて、ゆずの香りを強めたり炭酸を強化したりと夏にふさわしい爽快感を高めています。この販促に際して、サントリーは日本全国「涼すい」化計画という非常に大規模なサンプリングを実施しています。

札幌や仙台、東京や名古屋、大阪や広島、福岡など全国7都市において商品を配布しました。また、特設スポットにはすだれや風鈴など夏を彩るアイテムが飾られ、浴衣を着たスタッフが商品を配布しました。商品を渡すだけでなく、雰囲気作りから行うことでより商品のコンセプトを伝えられるでしょう。

大塚製薬の事例

大塚製薬の商品のなかでも代表的な「ファイブミニ」も、過去にサンプリングを実施しています。ファイブミニは特定保健用食品の食物繊維飲料として知られており、腸活に役立つといわれています。

ファイブミニは私たちの食生活で不足しがちな食物繊維を手軽に取れ、お腹の調子が整えられる特徴を活かしサンプリングを実施していました。なお、サンプリングは「my腸活チャレンジ」との名称で開始され、ファイブミニを7日間ユーザーに飲んでもらいどのような変化があったかを体感してもらう取り組みでした。

当該サンプリングでは、実際にユーザーにファイブミニを飲んだ後、どのような変化があったかを報告してもらえます。さらに、記録をさまざまな人に確認してもらえるため、広告色を抑えながら効果を伝えられるメリットがあるとわかります。

アンソンバーグの事例

デンマーク王室御用達のチョコレートブランドである「アンソンバーグ」は、空港でサンプリングを実施しました。このサンプリングは航空会社の情報をもとに「良い座席」「悪い座席」を教えてくれるサイト「SeatGuru」とタッグを組み、実施されたイベントです。

旅行客が自分の搭乗券を専用マシンにスキャンさせると、座席の快適性が判定されるシステムで「快適」と出た人にはアンソンバーグのチョコレートがプレゼントされました。

「普通」の判定には、快適に該当した人よりも一回り大きな袋のチョコレートをプレゼントし、「あまり良くない席」と判断されてしまうとさらに大きな袋のチョコレートをプレゼントする取り組みを実施しました。そして「あまり良くない席」と判断された人には、チョコレートだけでなくネックピローやアイマスクなど、機内で旅行客が快適に過ごせるようなグッズもプレゼントされます。

自社の商品を試してもらいながら、顧客の困りごとを解決する取り組みのため、サンプリングの成功事例といえるでしょう。サンプリングではやみくもに情報を集めるのでなく、ユーザーにとってメリットがあるアプローチ法が重要とわかります。

まとめ|サンプリングを活用して認知度・売上向上を目指そう

サンプリングはユーザーが自社商品やサービスに対して、どのような考えを持っているか把握するために欠かせない施策です。ターゲットをピックアップして調査できることから、効率的にデータ収集が可能です。

しかし、サービスや商品に適したサンプリング配布を行わなければ効果は期待できません。もしも、サンプリングで不安を抱えた場合は、専門家への依頼がおすすめです。千修ではサンプリングを含めたマーケティングのさまざまな施策を支援可能です。ぜひ一度、お問い合わせください。

Related column関連コラム