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コラム

2024.02.26

【事例あり】VMDとは?ディスプレイとの違いや効果的な実践方法を紹介

販促

店舗の売り場づくりを何から改善すればよいかお悩みの方もいるでしょう。店舗の運営において、顧客の購入意欲をかきたて売り上げにつなげるマーケティング手法としてVMDがあります。今回は、VMDとは何か、ディスプレイの違い、効果的なVMDを行うためのポイント、各業界で行われているVMDの事例などを紹介します。

効果的なVMDを行うためには、VP・PP・IPの3つの手法を押さえた実践や、4つの基本構成に関する知識などが必要です。VMDの具体的な事例を通して自社での取り入れ方を学びましょう。

VMDとは?

VMDとは「Visual Merchandising(ビジュアルマーチャンダイジング)」を略した言葉で、視覚的な販売戦略の意味を持っています。顧客が商品を手に取りやすいよう、店舗の配置やディスプレイを工夫し、購入しやすくなる売り場を作るマーケティング手法です。

VMDでは、店舗の内装イメージを一新したり、企業やブランドイメージとマッチする什器を導入したりします。また、販売スタッフの研修もVMDの一環です。たとえば、ファッション・アパレル業界でいえば、マネキンのディスプレイやショーウィンドウのディスプレイ、書店でいえば、本を紹介するポップアップもVMDです。

VMDとディスプレイの違い

VMDとディスプレイは似た概念と捉えられる場合が多いですが、ディスプレイとは商品を魅力的に見せるための展示や陳列そのものを指します。一方、VMDは視覚的な販売戦略全体を指す言葉です。そのため立ち位置が異なり、ディスプレイの工夫はVMDの一つと考えられます。つまり、VMDによって立てられた計画や内装デザインに従って、ディスプレイを見やすく整えていく流れです。

たとえばキャンペーン時のVMDで、季節に合わせた商品を展示に組み込むことを決めたら、ディスプレイやマネキンに該当する商品を着用させて、戦略を反映させます。

VMDで大切な3つの要素

VMDにより販売促進を成功させるためには、売り場や店舗運営を改善する取り組みであるMP(マーチャンダイズプレゼンテーション)を実施する必要があります。MPの手法は、VP・PP・IPの3つです。3つの手法を有効活用して、商品の見せ場を作り、品ぞろえの魅力をアピールできるようにしましょう。

VP(ビジュアルプレゼンテーション)

VPとは、店舗や売り場、オフィスなど空間全体の視覚的なコンセプトを決定し、実際に表現する取り組みです。効果的なVPを実施するためには、企業のブランドイメージやトレンド、季節などに合わせて、統一感のある雰囲気を出す必要があります。また、店舗の第一印象を左右する重要な要素です。

VPの目的は、顧客の興味を引き足を止めてもらうことです。アイテムやPOPを活用して商品のPRを店頭で行い、顧客の興味関心を引ける売り場づくりを行いましょう。たとえば、デジタルサイネージを利用して、動的に商品やブランドイメージを伝えるのも一つの手段です。

PP(ポイント・オブ・セールス・プレゼンテーション)

PPとは、全体を設計して配置・陳列した商品のうち、販売を促進したい商品をピックアップして、店頭やコーナーなどで、強調して売り出す取り組みです。代表的な手法には、マネキンを用いた商品ディスプレイがあります。

アパレルショップではマネキンを店頭のショーウィンドウに飾っているケースが多いでしょう。マネキンにはトレンド商品や季節に合わせて売り出したい商品を着用させます。PPを実施する際は、店舗の出入り口やレジカウンター周りなど、顧客の視線が集まりやすい場所で行うと効果的です。顧客がPPからPPへと視線を移しながら移動できるよう動線を整えることも重要です。

IP(アイテムプレゼンテーション)

IPとは、個々のアイテムを「見やすく」「選びやすく」「買いやすく」陳列する取り組みです。IPは通常の配置の中で陳列棚やガラスケース、ハンガーラックなどの什器を利用して行います。商品陳列やPOPによって一つひとつの商品の種類や展開されているカラー、サイズなどをわかりやすく伝える必要があります。

また、ただ並べるのではなく、店舗のコンセプトや季節感に合わせて陳列を工夫することが大切です。たとえば、メリハリをつけて顧客の目を引けるよう、定番商品やカラーは通常の陳列を行います。また、使い方をイメージしにくいトレンドや季節のアイテムは、ほかの商品と組み合わせて陳列したり、マネキンを使って配置したりするのが効果的でしょう。商品の特性によって方法を変えるのも一つの手です。

VMDが活躍する業界や店舗

VMDが活躍する主な業界や店舗は下記があります。

・アパレル
・スーパー
・書店
・化粧品店
・インテリアショップ
・カーディーラー

VMDはアパレル業界で実践されているイメージが強いマーケティング手法ですが、実際には「もの」を購入する小売業全般に活用できます。各小売店でVMDを行うと顧客の店舗での滞在時間が長くなり、購入意欲の向上や実際の売り上げにもつながることが期待できます。また、視覚的にポジティブな印象を与えることから来店者数増加やリピーター獲得にも貢献します。

顧客に長く店舗を見回ってもらい、商品を購入したいと感じてもらうためにも、VMDによる居心地のいい空間づくりが欠かせません。

VMDの効果を発揮させるディスプレイのポイント

店舗の販売促進を図るために欠かせないVMDですが、適切な戦略が立てられなければ効果は発揮されません。ここではVMDの効果を発揮させるディスプレイのポイントを紹介します。

4つの基本構成を意識する

商品を美しく魅力的に見せ、顧客に購買意欲を湧かせるためには、ディスプレイの4つの基本構成を押さえましょう。

・三角:高さの異なる商品は正面から見て三角形になるように陳列する
・シンメトリー:左右対称(シンメトリー)に商品を陳列する
・アシンメトリー:左右非対称(アシンメトリー)に商品を陳列する
・リピート:規則性を持たせて商品を陳列する

また、アパレルショップでマネキンを利用する際の基本的な配置方法は、数によって異なります。2体の場合はマネキンの視線を顧客の目線の方向にそろえる場合と、どの方向から顧客が来ても目線が合うようずらす場合があります。

また、陳列棚と合わせて三角の構図を活用したり、3体で三角やリピートの構図を使ったりするのも一つの手段です。

ブランドイメージを反映させて統一感を出す

VMDには顧客の購買意欲を向上させる目的がありますが、同時に企業やブランドのイメージ・アイデンティティを視覚的に表現する手法でもあります。ブランドや企業のイメージをディスプレイに反映させると顧客の持っているイメージと自社ブランドをマッチさせられます。その結果、購買意欲を高める効果が期待できるでしょう。

たとえば、紳士服を扱う店舗において価格よりも質を重視して商品展開している店舗では、価格ではなく衣服の生地やしつらえをアピールする方法が有効です。具体的には、「シルクのような艶やかさをもった上質なウールを使用しています」など、どのような点で優れているかをアピールしましょう。

レイアウトは顧客目線で作る

実際に商品を手に取って購入するのは顧客のため、顧客目線のレイアウト設計が大切です。陳列やレイアウトを設計する際は、顧客が移動する動線を意識しましょう。見やすい位置にディスプレイや配置を考える必要があります。入口から入り、どのコーナーから見て回り、どのようにレジまでやってくるかをイメージして、違和感のない店舗づくりをすることが重要です。

また、こだわりを持ちすぎず、顧客にとっての見やすさを意識した陳列も心がけましょう。たとえば、同じカテゴリの商品を並べて配置したり、セットで利用しやすいものを近くに配置したりすると、顧客が目当ての商品を見つけられやすくなります。

ソーシャルディスタンスを意識して配置する

アフターコロナの時代において、ソーシャルディスタンスを意識した売り場づくりが注目されています。コロナ禍では、感染リスクを減らすために人との接触を減らす行動が積極的に取られ、ECサイトを利用して商品を購入する人が増加しました。

しかし、今後も商品を実際に見て、手に取って確かめられる店舗販売の需要が完全になくなることはないでしょう。そのため、これまでよりも店内の空間を広く取り、3密を回避できる売り場づくりが求められています。陳列棚や什器、マネキンの間隔をあけると顧客同士の距離もあくため、一人ひとりがリラックスした雰囲気で店内を回れるでしょう。

効果的なVMDの事例紹介

ここでは効果的なVMDを実践している事例を紹介します。概念やポイントを理解しても、実際にどのように活用すればよいかわからない方も多いでしょう。具体的な事例を確認して、応用できる施策がないかチェックしましょう。

1.食品スーパーの店頭装飾

食品をメインに取り扱うスーパーでは、野菜や果物の陳列方法を工夫しています。たとえば、ある食品スーパーでは野菜の新鮮さが伝わるようスポットライトを設置して光を当て、野菜がより色鮮やかに見えるようにしました。野菜の新鮮さをアピールして購買意欲をかきたてる狙いがあります。

また、別の食品スーパーでは店舗ごとにテーマを決めて、統一感を持たせる取り組みが行われています。たとえば、子ども連れの多い店舗では、テーマパークをイメージした店舗づくりを意識し、人形を飾ったりカラフルなPOPを設置したりして、小さな子どもが飽きずに買い物を楽しめる工夫がポイントです。

2.アパレル店舗の商品配置

あるアパレルショップでは、これまでジャケットやシャツ、ボトムスなど商品のジャンルごとに分けてハンガーで陳列し、商品を探しやすい売り場づくりを心がけていました。しかし、ハンガーで陳列していたことで商品の色はわかるものの、シルエットや雰囲気は店内を見渡しただけでは捉えられませんでした。

そこで、ジャンルごとの陳列はそのままに、売り出したいアイテムを正面に配置し、商品のシルエットや雰囲気が店内を見ただけで確認できるようレイアウトを変更しました。PPを活用した陳列方法により、顧客の購買意欲向上が期待できます。

3.生活雑貨店のゆとりのあるレイアウト

ある生活雑貨店では、ゆとりのある通路を確保したレイアウトが意識されています。3密を避けるとともに、顧客同士が商品を見ているときに窮屈にならないよう空間が確保されています。また、ナチュラルな雑貨商品のイメージに合わせてカラフルなPOPは避けているのもポイントです。レイアウト自体もシンプルに作られており、商品と空間の統一感が図られています。

4.化粧品店の店外から見る雰囲気

ある化粧品店では、店舗の外から見える雰囲気に工夫を凝らしています。これまでは店内が確認しやすいようドア付近の窓には何も設置していませんでした。しかし、店内からの視線に圧を感じ、なかなか顧客が気軽に店内に入れない環境になってしまっていました。

そのため、顧客を店舗内へ誘導できるよう、入口横に店舗のコンセプトやイメージがわかるポスターを設置しました。その結果、店内の雰囲気を外から見た人にも簡単に伝えられ、来店客増加に成功しました。商品の購入につなげるためには、店内で商品を見ている顧客だけでなく、これから店内に入ろうとしている顧客に向けた取り組みも大切であることがわかります。

5.書店のコーナー設置

ある書店では、顧客の興味を引くよう、目に留まりやすい場所コーナーに新刊を配置しました。しかし、売り上げは伸び悩んでおり、新刊コーナーがどこか尋ねる顧客も増えてしまいます。そこで、新刊コーナーが一目でわかるよう大きなPOPを設置しました。POPを設置したことで新刊コーナーの場所を尋ねる顧客も減り、売り上げアップの効果が期待できる結果となりました。

また、書店で平積みをする際は、すべて同じ高さにそろえてしまうと隣の本とのすき間がなく手に取りづらくなってしまいます。1列ずつ高さを変えて積むと簡単に手に取れるため、顧客が気軽に本をチェックできるよう配置を変えるのも一つの手段です。

VMDに期待できる効果

VMDを実践すると、顧客の来店率や購入率の向上による売り上げアップが期待できます。効果的なVMDを実施すれば、顧客にとっての「見て」「選んで」「購入する」の流れがスムーズに行えるようになります。購買意欲をかきたてられるため購入率のアップにつながるでしょう。わかりやすい陳列を意識すると顧客も目当ての商品を見つけやすくなるため、顧客満足度の向上にもつながるといえます。

また、VMDは企業のブランディングを行うためにも有効です。VMDを行う際は店舗のコンセプトを明確にする必要があります。そのため、企業やブランドが持つ強みや評価されているポイントの再認識につながり、アピールして伸ばすべき強みが明確になるでしょう。

陳列や配置を整え、顧客にとってわかりやすい店舗づくりができていれば、顧客から商品の場所を尋ねられる機会も減り、業務の効率化が図れます。店舗づくりのコンセプトを言語化してスタッフに共有すると、全スタッフが同じ認識を持って接客を行えるため、接客スキルの向上にもつながるでしょう。

まとめ

VMDは、顧客の購買意欲を誘い、売り上げを向上させる店舗づくりに欠かせないマーケティング手法です。基本要素であるVP・PP・IPを意識した店舗づくりを行うことで、効果的なVMDが実施できます。しかし、専門知識や経験がない状態では何から始めたらよいかわからない方も多いでしょう。

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