2024.08.29
情報設計とは?実施のメリットやポイントを解説
クリエイティブ
情報設計とは、Webサイトの訪問者が使いやすいよう構造を設計することです。住宅作りで例えるなら「間取りの打ち合わせ」にあたります。
LP・コンテンツ・問い合わせフォームといった各情報を適切な場所へ配置することで、効果的にコンバージョンへつなげられるWebサイトを作成可能です。今回は、Webサイトにおける情報設計の基本情報や最適なWebサイトを設計するポイントをご紹介します。
情報設計とは何か
まずは情報設計の概要と実施の目的について解説します。これからWebサイトの作成および改善をするうえで、サイト内の構造に関わる情報設計は重要な存在です。
情報設計の概要
情報設計は、自社のWebサイトやアプリを作る際に行う取り組みの一つです。Webサイトの構造を適切に配置してユーザビリティを高め、顧客の獲得や流入をスムーズにする役割を担います。そのため、情報設計では要件定義やコーディングを行うのではなく、Webサイトの構造の設計図を作る工程といえるでしょう。
Webサイトを制作する前に情報設計という形で全体像を作り、社内で認識を揃えることで効果があるサイト制作ができます。ユーザーが理解しやすいサイトはSEO対策の効果も見込めるため、コンバージョンにも直結します。
情報設計の目的
情報設計は、Webサイトで各種情報をユーザーにより伝わりやすくすることが目的です。そのため、情報設計ではWebサイトの要件定義に合わせた導線設計を明確にする必要があります。
例えば、ユーザーのアクセスにおけるゴールであるKPIやKGIも、情報設計をするうえで重要なデータの一つです。情報設計を最適に行うには、事前のコンテンツ要件や機能要件といった要件定義が詳細に行われていなければなりません。
また、情報設計が適切に行われることで、後のフェーズであるインターフェースデザインやビジュアルデザインにおいても具体的なアクションを決められるようになります。
情報設計のプロセスを解説
情報設計の基本プロセスは、以下の通りです。
①情報設計の目標設定
②情報の構造を整理
③情報の優先順位を定める
④導線設計
⑤実装
Webサイトの用途や実装する機能によって設計のプロセスは若干異なりますが、基本的に上記の手順に沿って設計されることがほとんどです。ここからは、情報設計の基本プロセスについて解説します。
1.情報設計の目標設定
情報設計の最初の段階では、ユーザーにサイトで「何をしてもらうのか」という目標設定を行います。具体的には「会社の情報を伝えて商品のサービスページにアクセスしてもらう」「求人に応募してもらう」といったものが挙げられるでしょう。目標を設定すると同時に、ターゲットも設定します。
人物像を絞り込む「ペルソナ」やターゲットの購買行動をシナリオとして捉える「カスタマージャーニー」といったフレームワークを用いて、適切な目標設定を行いましょう。
2.情報の構造を整理
ターゲットや目標が決定すると、掲載する情報の構造を整理していく必要があります。情報が複数ある場合は、情報と情報の関係性を意識しながらジャンル分けを行わなければなりません。
具体的なプロセスとしては「リストアップ・ジャンル分け・情報構造の整理」の順番で行うとよいでしょう。
整理した情報は「オブジェクト指向UX(OOUX)」や「オブジェクト指向UI(OOUI)」といったアプローチでWebサイトの構造へ落とし込みます。オブジェクト指向UXはコンテンツを主体とした情報設計を行う方法で、オブジェクト指向UIは商材を主体にする方法です。
構造の中心となるオブジェクトを事前に決定することで、この後の「情報の優先順位」の決定をスムーズにできます。
3.情報の優先順位を定める
掲載する情報の整理とオブジェクトの設計ができたら、各データや情報に優先順位をつけて提供する順序を定めていきます。自社が最も伝えたい情報がアクセスしやすいところに配置されているのが理想的ですが、優先順位はユーザーのニーズや目標に基づいて行わなければなりません。
例えば、サービスの契約が商材の場合は、宣伝やLPを閲覧してから資料請求を行います。そのため、情報の優先度はオブジェクト指向UXでベースとする「コンテンツ」が高いといえるでしょう。
一方でECサイトの場合、購買の流れは商品を選んでから後の操作を行うのが一般的です。こちらにおける情報の優先度は、オブジェクト指向UIでベースとする「商品」が最も高いといえます。このようにWebサイトによって起点とする情報が異なるため、ユーザーのニーズや目標に基づいて優先順位を決定しましょう。
4.導線設計
情報の優先順位を決めた後は、どの画面でどの情報を表示していくか、インターフェースに関する領域を決定していきます。この段階においてはワイヤーフレームやプロトタイプの作成を行い、階層を定めていきましょう。ここでは、ユーザーに離脱されないようにすることが重要です。
とくに、スマートフォンでは1画面に収められる情報量が大幅に制限されます。アクセス〜コンバージョンまでの道のりが長いWebサイトや、スクロールの多いコンテンツは途中離脱を招いてしまうでしょう。
自社の伝えたい情報とユーザーの行動心理のバランスを取りながら、最適な導線を設計するスキルが求められます。
5.実装
情報設計が終了すると、最後はインターフェースやビジュアルの実装です。ここで初めて、情報設計のプロセスが具現化されます。実装をするなかでは、実際にユーザーに意見を聞いたり社内で検討を重ねたりしていき、設計と実装内容のズレを修正する必要があります。
実装段階で初めて気づく点も少なからず存在するため、この段階においてもUXの向上を意識しながら微調整を行いましょう。
情報設計を実施するメリット
Webサイトの改善・作成における情報設計は、後のインターフェース設計・ビジュアルデザイン・コンテンツ制作の基盤となる工程です。情報設計が適切に行われることで、以下のメリットがあります。
コストや時間の削減
適切な情報設計は開発をスムーズにするため、修正にかかる諸費用を削減可能です。最適な設計がなされることで必要な人員数を明確化でき、最低限の人数で効率的にWebサイトを実装できます。
また、適切な設計はエラーや修正の発生を最小限に抑えられます。問題が起きると、問題点の洗い出し・再テスト・修正など人員を多く割かれて開発予算を逼迫してしまうため、予算オーバーを防止するのにも効果的です。
情報設計の間にターゲットや導線を入念に定めておくと、開発中に大きな変更が発生しにくくなります。
コンテンツの品質向上
情報設計で構造化や導線が明確になっていると、サイト全体の見やすさが向上します。ターゲットに合わせた画像の選定やデザインの選定により、ポジティブな印象を持ってもらいかつ情報の理解を促せるのです。
コンテンツの品質が高まると、ユーザーに何度も訪れてもらえたり価値があるサイトとして認めてもらえたりします。被リンクの獲得やサイテーションの獲得にもつながるため、ドメインパワーの向上によるSEO外部対策にも効果的です。
UXとCVの向上
情報設計を行うことで、ユーザーは情報を探しやすくなるメリットがあります。ユーザーが使いやすいと感じるサイトはUXが高いサイトと同じで、ユーザーの満足度を高められます。ユーザーの満足度が高まると、おのずとコンバージョン(CV)の向上にもつながっていくでしょう。
情報設計の注意点
UXの高いWebサイトを作るうえでは、情報設計のクオリティが求められます。しかし、一言に「最適な情報設計を作る」といっても、クオリティの高い構造を作るのは簡単なことではありません。こちらでは情報設計における注意点について解説します。
専門性が求められる
情報設計はプロセスが複雑で、効果的な構造を作るには「アーキテクチャ設計」や「設計技法」といった専門的かつ多方面の知識が求められます。
情報設計を行うためのテクニックや理論を習得するために、時間やコストがかかる点は、デメリットといえるでしょう。情報設計はいわゆる上流工程であるため、デジタル的なスキルだけでなくマネジメントやコンサルティングのスキルも欠かせません。
自社で適切な人材をアサインできない場合は、制作会社やコンサルタントに依頼する方法も検討しましょう。
柔軟な対応が難しい
はじめに情報設計を行うとコンテンツはそれらをベースに作成を行うため、途中での大幅な変更が困難です。サイトの作成で方向性が大きく変わったときは、0からやり直すため膨大なコストがかかります。
柔軟性を維持するためには細やかに見直したり、トラブルシューティングを行ったりしながら進めるのが大切です。また、UXの高いWebサイトを作るには、ユーザーのフィードバックも欠かせません。
解決方法が見いだせない可能性がある
場合によっては情報設計において問題や改善点が見いだせないこともあります。具体的な箇所の洗い出しが難しい場合は、アナリティクスツールやユーザーテストを活用するのが効果的です。
実際のユーザーのアクションやツールが示すデータにより顕在化するケースも珍しくありません。ただし、分析ツールの扱いや高度なテストには専門知識が必要です。分析が自社で難しい場合は、有識者へ相談するか外部へ依頼するとよいでしょう。
情報設計に活用したいフレームワーク「LATCH」とは?
これからUXの高い構造を作るうえで効率がよいとされる手法が「LATCH」と呼ばれるフレームワークです。LATCHは「場所・アルファベティカル・時間・カテゴリ・階層」に分けてデータや情報を分類、整理する手法で、事前に定義したコンテンツや機能の要件を配置するうえで役立ちます。
1.Location(場所)
Location(場所)は、場所・位置・空間や部位を表す要素です。とある情報を位置や場所によって分類して、ユーザーにとって見やすくする仕組みを指します。
具体的には「施設のリストを都道府県ごとに順番に見せていく」「住所設定で北海道から沖縄県まで順番に表示する」といった方法があります。
2.Alphabet(アルファベティカル)
Alphabet(アルファベティカル)とは、アルファベットや50音順に情報を整理することを指します。具体的には本や用語解説の索引などが挙げられ、検索性の高さが特徴です。近年はネットの発達により使用する頻度が少なくなっているものの、見やすさの点からユーザビリティの向上に効果的です。
3.Time(時間)
Time(時間)は、時間軸によって情報を整理する方法を指します。具体的には年表や時刻表など、物事の変化が現れやすい情報が代表的です。コンテンツにおいて時間は世界共通での概念であるため、タイムラインや受信履歴で表示することは、ユーザーの理解のしやすさにつながります。
4.Category(カテゴリ)
Category(カテゴリ)は、ジャンル別やタイプ別など、なんらかの共通項を持つグループごとで情報を整理する方法を指します。例えば、個人ブログの場合は「料理」「お知らせ」など、カテゴリごとに記事の分類を表示しているものです。
カテゴリはアルファベティカルと混同されやすいですが、カテゴリにおいては序列という概念がありません。そのため、各カテゴリでは並び順を設定する必要があります。
5.Hierarchy(階層)
Hierarchy(階層)は、人気の度合いや長さなど、数値の順位に従って分類する方法です。階層で分類・整理することで、情報の価値やそれぞれの重要度が明確になるメリットがあります。例えば、自社商品ランキングや人の身長や体重などが代表的です。
情報設計成功のポイント
情報設計はUXデザインモデルにおける「戦略・要件・構造・骨格・表層」の5つの段階における「構造」を担う工程です。そのため後の工程である骨格と表層のクオリティにつなげるには、構造にあたる情報設計の成功が欠かせません。ここからは、情報設計成功のポイントについて解説します。
サイト制作の目的を明らかにし共有する
情報設計を行ううえでは、社内で「なぜサイトを制作するのか」を明確にし、関係者で共有する必要があります。目的が明確でなければ数値の目標設定もできず、効果的な施策を行えません。目的に沿ったサイトの制作ができると、ユーザーにとって有益な情報を提供できるコンテンツ作成ができます。
ペルソナを定める
情報設計では、目標設定と合わせてペルソナも定める必要があります。ペルソナはターゲティングを行うフレームワークの一つです。
「30歳男性」「10代高校生」といった大まかなくくりでなく、職業・趣味嗜好・住所など具体的な属性まで定めます。サイト内でペルソナにさせたいことや提供したい情報などを明確に定めると、CVの向上にもつながるでしょう。
カスタマージャーニーマップを作成する
ペルソナの設定とあわせてカスタマージャーニーマップを作成するのもポイントです。カスタマージャーニーがあることで、対象のペルソナの悩みに対する具体的な解決方法を決定し、それに合わせたコンテンツを制作できます。
またカスタマージャーニーマップにより、サイト内の導線を明確にし「見やすく使いやすい設計」を行うことも可能です。
情報設計はフレームワークの活用が大切
情報設計はWebサイト全体の設計図の役割を担うため、要件定義・ユーザーのニーズ・KPI・KGIなどさまざまな要素を構造に落とし込むスキルが求められます。
各要素を網羅したWebサイトを設計するには、ペルソナ・カスタマージャーニー・オブジェクト指向UI/UX・LATCHなど、情報の最適化に効果的なフレームワークをフル活用するのが成功の早道です。確立された手法を駆使して、UXの高いWebサイトを設計しましょう。